ライン

ICHIHARA ART × MIX

ライン



千葉県中房総、市原市(牛久~養老)で国際芸術祭「ICHIHARA ART × MIX」が2014年3月21日から5月11日まで開催されました。

「中房総国際芸術祭」という名称も使われています。今後も数年に1回、継続的に開催される可能性もあります。

作品の写真と紹介、感想を報告します。

2014年05月29日更新

ICHIHARA ART × MIX



Tt-2

Tt-3

Tt-4

湖の飛行機/KOSUGE1-16 Heigh-Ho(2013)/KOSUGE1-16 Toy Soldier(2013)/KOSUGE1-16
湖の飛行機

KOSUGE1-16
Heigh-Ho(2013)

KOSUGE1-16
Toy Soldier(2013)

KOSUGE1-16
飛行機が不時着したわけではありません。ボートで飛行機に向かって、釣りもできます。日本では飛行艇を見る機会はないので、湖の飛行機は日本でここだけです。 市原湖畔美術館のエントランス、恒久展示作品です。半屋外なので、訪問したときは眩いほどの晴天で、光の反射がきれいでした。雨に濡れて光っている姿もよさそうです。 市原湖畔美術館を、門番として警護されています。等身大くるみ割り人形、煙の出るパイプ人形のようですが、たぶんドイツのおみやげではありません。

Tt-5

Tt-6

Tt-8

Lost Windows(2013)/クワクボリョウタ Museum-Stairs / Roof of Needles & Pins(2013)/アコンチ・スタジオ(ヴィト・アコンチ+フランシス・ビトーニ+ジュリアン・ローズ) 彼?彼女?またはそれ?/リン・テンミャオ(林天苗)
Lost Windows(2013)

クワクボリョウタ
Museum-Stairs / Roof of Needles & Pins(2013)

アコンチ・スタジオ(ヴィト・アコンチ+フランシス・ビトーニ+ジュリアン・ローズ)
彼?彼女?またはそれ?

リン・テンミャオ(林天苗)
湖畔美術館の地下室の壁に、建物の影絵が動いています。中央にゆっくり回転する光と、紙を切り取った家などの物体があり、鑑賞者も人の影絵の役割になります。日没後すぐの古き田舎の世界のようです。 湖畔美術館は迷路のようですが、屋外スロープと屋上に、メタルな竹林があります。メタルな竹林には腰掛けられる場所もあり、現代の竹取物語の世界かもしれません。風になびいてほどよい音を出しています。 骸骨や古い小道具が夜になると動き出すお話は、世界中にあります。機能的に利用価値がない、奇想天外な組み合わせを飾ることで、魂が込められそうです。それと、人間のつくった小道具のバリエーションの豊かさがよくわかります。

Tt-9

Tt-10

Tt-11

積載:プロジェクト・アナザー・カントリー/アルフレド & イザベル・アキリザン いちはら物語/ストール・ステンスリー 里の藝術シリーズ1「360度の山水画ワークショップ」/保科豊巳
積載:プロジェクト・アナザー・カントリー

アルフレド & イザベル・アキリザン
いちはら物語

ストール・ステンスリー
里の藝術シリーズ1「360度の山水画ワークショップ」

保科豊巳
さかさまの船にダンボールの荷物が多数積載されています。遠くから見ると、それも合わせて帆を張った船のようにも見えます。沈没船の漁礁で暮らす魚の気分にもなり、過積載の戒めのような気もします。 市原市を切り取った型のようなものが空中に吊るされており、そこから読経のようなものが響いています。手をかざすと読経が小さくなったり、止まったり、再開したり。連綿とつづく伝統がありそうです。 この後ろの木で囲まれたところで、山水画ワークショップが開かれていたようです。開催の様子を見ていないので何ともいえませんが、隣にカフェがあります。晴天の芝生で食べるアイスはおいしいです。

S-3

S-4

S-5

IAAES/みかんぐみ 地熱の扉/小沢敦志 養老山水図/角文平
IAAES

みかんぐみ
地熱の扉

小沢敦志
養老山水図

角文平
「IAAES」は「Ichihara Art/Athlete Etc.School」の略とのこと。廃校となった里見小学校の小道具などに、メッセージが記されています。グラウンドをのぞく窓には、「We Gave all We Could」。廃校になるほど人が少なかったという意味も見えてきそうです。 鉄の塊からつくられた鉄製品を、たたいて、つぶして、また鉄の塊に戻すというプロジェクト。超人力リサイクルです。かなり長期間のプロジェクトらしく、今年はまだ卵型が見えてきたぐらいの完成度です。 こちらも、いつ完成するかわからない、未完成のプロジェクトです。養老渓谷の山水図、市原の地形を彫刻刀で彫っていくとのことですが、まだ準備段階のようで、途中という感じでもありません。来年も開催されたら少しは進んでいるかもしれませんが。

S-6

S-7

S-8

プリンシパル オフィス/栗林隆 美術室/豊福亮 おかしな教室/滝沢達史
プリンシパル オフィス

栗林隆
美術室

豊福亮
おかしな教室

滝沢達史
廃校の校長室が凍らせてあります。当然、超寒いので、3人ずつ、1分限定の観覧です。校長室を冷凍保存しておけば、いつか子供たちがまた戻ってきてくれるのではないかという、かすかな希望がありそうです。 超豪華な美術室です。もちろん、本物ではありませんが、ダビンチ、ミレー、ゴッホなどの絵がすべての壁と天井に、脈絡なく飾られています。「群衆を率いる自由の女神」はルーブル美術館でもインパクトありましたが、模写でも目立ちます。 お菓子の家というのは、よく耳にしますが、お菓子で飾られた教室です。飴を使ったシャンデリアなどですが、安っぽく見えないのがアーティストの工夫なのでしょう。お菓子に囲まれると、大人になっても幸せになりますね。

S-9

S-10

S-11

シンセティックワールドの再生2014/ホアン・スーチェ(黄世傑) 芭蕉の月/デ・キリコの月/ガルシア・ロルカの月ほか/レオニート・チシコフ スピード・スペース・スピーチ/ミシャ・クバル
シンセティックワールドの再生2014

ホアン・スーチェ(黄世傑)
芭蕉の月/デ・キリコの月/ガルシア・ロルカの月ほか

レオニート・チシコフ
スピード・スペース・スピーチ

ミシャ・クバル
理科の人体模型の周りに、虹色の光を当てられたビニル袋のアートがあって、それに空気が入れられたり、抜かれたりしています。廃校なので、夜になると動く系の妖しいアートが似合います。人体模型もどこか旅に出かけそうです。 物語性のある3つの月が、アートで再現されています。ロシアの方の作品ですが、芭蕉の俳句「木を切りて 本口見るや 今日の月」を表現しているそうです。父は芭蕉の研究者でしたので、親しみがありますが、これは知りませんでした。 暗い空間に複数のミラーボールが、高速で動いています。モノトーンの光で、華やかな美があるのですが、見ながら歩くと平衡感覚がかなり狂います。凝りすぎないアートも潔いですね。

Tz-2

Tz-3

O-1

森ラジオ ステーション/木村崇人 サンタルの食堂/岩田草平×プロマイノリティ 森の入口/CLIP
森ラジオ ステーション

木村崇人
サンタルの食堂

岩田草平×プロマイノリティ
森の入口

CLIP
小湊鉄道、月崎駅の横に、緑で覆われた小屋があり、そこに古いラジオがたくさん置かれています。チューニングを合わせると、人と森、動物と森などのライブ音源が聴けます。絵本の世界にありそうな、動物が運営するラジオ局を見つけた気分です。 インド、サンタルの方々に現地と同じような小屋を、いちはら市民の森に建ててもらって、そこでカレーをつくってもらうプロジェクトです。ちょっとピリ辛で、予想をはるかに超えるおいしさでした。普通のお店で提供であっても、また食べたいです。 小湊鉄道、上総大久保駅前のトイレですが、トイレの通路を通過すると竹藪になっており、そこから森の入口です。パブリックアートで、通路が広く目立つトイレができることは、防犯上もメリットがありそうです。

O-2

O-3

O-4

いちはら人生劇場/カン・ユンス(姜侖秀) 呼吸する廊下/西堀隆史+ウィット・ピンカンチャナポン 大饗宴の法廷裁判/色相彩度/ジティシュ・カラット
いちはら人生劇場

カン・ユンス(姜侖秀)
呼吸する廊下

西堀隆史+ウィット・ピンカンチャナポン
大饗宴の法廷裁判/色相彩度

ジティシュ・カラット
何気ない写真にも、メッセージが書かれていると後世にもずっと考えるきっかけを与えてくれます。文人画のようです。気に入ったのはこの「一年前のフィルムには、ほとんど今と変わり映えしない世界がある。ただ、写っているうちの何人かが、前とは違う場所で生きている。残りの人たちはフィルムの中の場所で、去年と同じように暮らしている。」というメッセージ。 開発途上国の工事現場では、竹で足場が組まれていたりしますが、ここはそうではありません。暑い日でしたが、本当は何もないより遮るものが多いはずなのに、風通しがよくなっている気分になります。視覚の効果はすごいですね。 さまざまな国旗や州旗などが、常に3つか4つ投影されていて、ゆっくり重なり合いながら、他の旗に切り替わっていきます。現実の世界も、この映像のように、穏やかで違和感なく重なっているようなものであってほしいと願います。

O-5

O-6

O-7

もぐら/吉田夏奈 予測不可能な未来/ミルチャ・カントル ウェイクアップ/シティ/スリープ/カルロス・ガライコア
もぐら

吉田夏奈
予測不可能な未来

ミルチャ・カントル
ウェイクアップ/シティ/スリープ

カルロス・ガライコア
幼稚園の頃は、大きな積み木で家や、トンネルをつくって、そこをくぐったり、かくれんぼをしたりするのは楽しかった。空間が目の前しか見えなくなると、その先何があるのだろうというワクワク感は、大人になっても消えることはありません。 たたくと音が出る金属と、それをたたく棒がすごくたくさんあって、それがすべて入口のドアと紐でつながっています。入ってくる人がドアを開けるとそれが引っ張られて音が出る仕組みです。いつ人が来るかわからないので、まさに予測不可能な未来です。 学校の遊具の中でもジャングルジムは楽しいものでした。これは、すべり台などと一緒になって、ちょっとしたアスレチックです。子供なら楽しみ方は無限、大人でも童心にかえって楽しめそうです。

O-8E

Y-1

Y-2

おにぎりのための毎週運動会/EAT & ART TARO なっぱすごろく/わっぱ駅弁 まっかわっぱ/スマイルズ生活価値拡充研究所 なっぱのぐるぐるやぐら/フジワラテッペイアーキテクツラボ
おにぎりのための毎週運動会

EAT & ART TARO
なっぱすごろく/わっぱ駅弁 まっかわっぱ

スマイルズ生活価値拡充研究所
なっぱのぐるぐるやぐら

フジワラテッペイアーキテクツラボ
運動会のときにみんなで食べるおにぎりは実においしかった思い出があります。そうならば、おにぎりのために毎週運動会をしようというこの企画。運動会には参加できませんでしたが、万国旗、点数表、レジャーシートから空気が読み取れます。廃校でも運動会はできます。 今回のART×MIXで駅弁もたくさん登場していますが、ちょうど養老渓谷で昼の時間になったので、この駅弁にしました。おこわがわっぱにくっついて、はしでそれをこさぎながら食べる感じでしたが、甘さと塩味と酸味のあるおかずがちゃんとあって、いろどりも豊かな駅弁の王道です。 養老渓谷の駅前広場に、らせん状のスロープをのぼる、展望台がつくられています。高さはさほどありませんが、山から街の景色を見下ろすのではなく、山を見上げる展望台なので、これで十分です。バスの発車間近だったので、一瞬でしたが、おだやかな自然であることはよくわかりました。

Y-4

Td-2

Td-3

おおきな家/大巻伸嗣 月出工舎/塩月洋生 経幢/シャオ・ミン(簫鳴)
おおきな家

大巻伸嗣
月出工舎

塩月洋生
経幢

シャオ・ミン(簫鳴)
家の中が迷路のようになっていて、作品があって、影絵のような映像があって、それがなんとなく動いていて、でもいつどんな感じで動くのかよくわからないといったものです。内部は撮影禁止なので外観のみですが、撮影していたとしても想像できない作品です。 月出小学校も現在は廃校になっていますが、土壁を組み合わせて、工房のような雰囲気を醸し出しています。他の廃校と比べても、ここは田舎にあり、自然豊かです。修復しつづければ、いつまでも使えそうです。 東南アジアの仏教にありそうな造形ですが、土の匂いが強い作品です。そういったところで無国籍風であり、厳かであるような、ないような。鳥取県の砂の美術館にも若干似たような作品があったかもしれません。

Td-5

Td-6

Td-7

この本、開いてもいいですか?/竹村京 光がつくる世界/岡博美 火処/チョウハシトオル
この本、開いてもいいですか?

竹村京
光がつくる世界

岡博美
火処

チョウハシトオル
子供たちがいる、どこか懐かしいほぼ白黒の写真があって、そこに薄い布がかけられており、その布の上からテーマにあった刺繍が施されています。ディジタル技術ではこのような映像をよく見るようになりましたが、これは超アナログで最新の映像効果を表現しているような作品です。 旧月出小学校のプールが、白と藍と、そして光が透ける半透明で表現された布で覆われています。天気がよかったので、眩しさの中に少し影をつくっています。暑い日に訪れたからかもしれませんが、水が張ってある状態も見てみたかったです。 風とおしが良くて、影もできる半屋外テントの中で、焼き芋やピザなどを焼いています。「やきいも日和」というこの焼き芋、いわゆる「びんつけ」で超甘くておいしいタイプです。2つに折るのも困難なほど、ねっとりしています。小さい頃中国で食べた焼き芋に似ていました。

Td-8

A-2

A-3

蔵風得水/月出創生計画/岩間賢 ユア・パートナー/小沢敦志 色々な村×かかし/開発好明+加茂学園
蔵風得水/月出創生計画

岩間賢
ユア・パートナー

小沢敦志
色々な村×かかし

開発好明+加茂学園
林道の工事現場や、台風のあとの災害復旧作業現場ではありません。私の出身地は台風が多いのでこのような光景は何度も見かけていますが、これは木と蔓がからみあった作品で、天然のアスレチックのようでもあります。 レンタサイクルのハンドルフレームの間に、金属板のメッセージが接合されており、訪れた人にそれを使っていただくという作品です。乗ることはしませんでしたが、サイクル置き場には、さまざまなメッセージの自転車が多数スタンバイしていました。 今回、最も広範囲の作品です。小湊鉄道のアートミックス関連の駅に、七色のいろいろなかかしがあり、乗っている人を楽しませてくれます。最後の養老渓谷駅を出たところに、「その日から七つの村に笑顔がもどり仲良く暮らしはじめたそうです。そして市原の空にもまた虹が戻ってきました。めでたしめでたし。」というメッセージがあります。


Copyright (C) 1000's Stamp Collection All Rights Reserved.
inserted by FC2 system